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設立趣意(任務・使命)

  • 文学研究科(名古屋大学における人文学拠点としての)の使命は、研究・教育による人類の文化遺産を継承し価値を世界と共有する"知の伝達"に務めることにある。
  • COEによるテクスト学研究拠点形成の成果を継承し、これをさらに高度化しつつ推進・展開して、次代の人文学を担う人材を養成することを目指す。
  • 研究・教育を常に社会的実践として遂行、分野・組織を横断して連携し、国際的な交流を通して成果を社会に貢献することを目指す。

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  9.11の直前にバーミヤンの大仏が蒙った暴力のように、人類の文化遺産は常に人為的な破壊に瀕し、また3.11の震災とそれにより惹き起こされた原発の破局は、地域ごと社会と伝承を根こそぎにしてしまう。我々の人文学は、これにいかに抗しうるのか。かけがえのない人類文化の遺産は、他ならぬ学問研究の基盤である。その記憶を記録にとどめ、文化として伝承することは、人文学の責務でもあるだろう。ひいては滅亡から救い、忘却から蘇らせる方法を案出し、試みることも要請されている。

 名古屋大学文学研究科は、人間文化の総合的な研究・教育の(よりどころ)である。その伝統的な人文諸学の基盤のもとに、テクスト学による高度な研究教育の拠点化を目指し、21世紀COEプログラム、グローバルCOEプログラムに採択され、十年間にわたって推進してきた。その達成は、人類のあらゆる文化の所産が悉くテクストとしてあらわされ、解釈することができるという共通認識をもたらした。テクストはまた、歴史の変遷のなかで絶えず文脈(コンテクスト)を生じ、また文脈により生ずる運動である。それは文字として書かれた言葉に限られず、イメージや空間として形象され、更には人の所作から儀礼芸能に及ぶ、多元的な諸位相として複合しつつ文化を創出していく。その運動は厖大な遺物を堆積させ、同時に保存伝承する営みもまたテクストと化す。こうして遺された全ては、悉くふたたびテクストとして解読される対象となる。

 散逸し断片と化した典籍文書を復元し目録化するアーカイヴス構築も、重なり絡み合った遺構を掘り起こして作図し再現するアルケオロジーの現場も、実際、全ての人文学が等しく営むところである。それぞれの専門分野ではもちろん特殊な知識と技能が必要とされると同時に、テクストに直面する誰もが分野を越えて協同することも求められるだろう。

むしろ、テクストそのものが人文学の新しい地平に我々を導き、(いざな)うのである。

 文学研究科は、このテクスト学拠点化の達成を基盤に、真に実践的な人文学創成を目指し、社会に積極的に関与する活動の場を設けた。名付けて「人類文化遺産テクスト学研究センター」という。

 その役割は、テクスト学研究を社会実践として、人文諸学の従来の枠組みと組織を越えた研究者の連携により推進し、その成果を常に発信し社会に還元することにある。また、この研究と発信は、常に国際的な人文学研究者および大学・研究機関と共同してなされ、そこに学び、従事する大学院生と若手研究者の交流のプラットホームとなることを期す。本センターは、それぞれに基幹教員を置く三つの部門で出発する。

○アーカイブス部門は、阿部泰郎が担当し、日本の寺院経蔵の聖教調査、とくに真福寺大須文庫や奥三河の花祭などに伝来する宗教テクストを探究し、「人文学アーカイヴス・ リサーチ・ネットワーク」の構築をすすめる。
○物質文化部門は、周藤芳幸が担当し、エジプトやギリシアなど、古代地中海世界をフィールドとして、都市や祭祀遺跡の発掘から碑文の解読まで、王権国家から人間の心性に及ぶ多元的なアルケオロジーを探究する。
○視覚文化部門は、木俣元一が担当し、フランスを中心とする西欧キリスト教美術を主な対象として、大聖堂のステンドグラスから装飾写本まで、宗教図像学のイメージ宇宙を探究する。

 各部門は相互に連携し、また国際交流では既設「アジアの中の日本文化」研究センターと共同して活動する。他研究者の協力教員にも参加していただき多彩なプログラムを設定するが、何より、このセンターを文学研究科全員に開かれたフォーラムとして生かしたい。個人や一機関が単独ですることには限りがあるが、互いに連携すれば、大きな運動を生み出すことが可能となる。この新センターがその媒ちとして文学の未来に少しでも貢献できることを(ねが)

センター長  阿部泰郎

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