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「アジアの中の日本文化」研究センター

センター長
藤木秀朗

日本からアジアへ、アジアから日本へ──アジアの中の日本文化

東アジアは現代の国際社会において最も注目されている地域と言ってよいでしょう。中国、韓国、台湾などの国々はグローバル経済の中で存在感を強め、国際社会に対する発言権を強めてきています。これらの国々はいうまでもなく日本との関わりも深く、長い交流の歴史を持っています。近年は東アジアの中を人も情報もめまぐるしく移動し流動しており、過去とは違う関係のありようが見出せます。一方で、歴史的に、また今日ただいまにおいても、日本はこの地域との関係に多くの課題を抱えてきました。現代におけるはげしい変化に対応し、そうした多くの課題に取り組むためには、東アジアを包括的に捉え、国家の枠組みをこえた横断的でダイナミックな視点がどうしても必要となってきます。
「アジアの中の日本文化」研究センター(JACRC)は、こうした超域的な視点を重視し、ますます重要となってきている日本と東アジアの関係を対象に、この地域が近代以降に経験してきた激動の歴史、そしてそこで育まれてきた豊かな文化的・社会的交流を、日本を中心に研究することを目的として、2013年度に文学研究科の附属センターとして設置されました。日本からアジアへ、アジアから日本へ──。「アジアの中の日本文化」という言葉を冠した新しいセンターでは、多様な分野における日本文化研究に基点を置きながらも、アジアとの関係の中で日本文化を位置づけ直し、これまでの一国主義的な日本研究の枠組みを打破し、一方通行ではない双方向的な関係の中に日本とアジアの文化を捉えて、学問的な対話の場を切り開いていくことが期待されています。さらには種々の企画によって大学院生を含む新しい世代の研究者の研究交流を活発化させることを通して、将来グローバルな舞台で活躍し、今後の日本とアジアの発展的関係に貢献しうる優れた人材を育成することも視野に入れています。

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これまでの取り組み──日本近現代文化研究センターの活動とその継続

「アジアの中の日本文化」研究センターは2008年度に同じく文学研究科附属センターとして設置された日本近現代文化研究センター(MCJC)の五年間に及ぶ研究活動を継続発展させるという意味を持っています。日本近現代文化研究センターでは、発足当初の二年間は国際シンポジウムをそれぞれ一回ずつ開催しました。「イメージとしての戦後」(2009年1月)、「反乱する若者たち―1960年代以降の運動・文化」(2010年1月)がそれです。2010年度からはさらに国際化を推進すべく、海外で研究集会を催しました。2011年1月に開催した、ドイツ・フライブルクでのワークショップ「文化の越境と翻訳」と、同年12月に中国・上海にて開催したシンポジウム「文化の越境、メディアの越境―翻訳とトランスメディア」がそれに当たります。これらの研究集会を通じて、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ドイツ、フランス、韓国、中国など海外のさまざまな国の研究者たちと議論し親睦を深めてきました。最終年度の2012年度には、MCJCの五年間の活動の総決算を行うシンポジウム「東アジア関係学の構想──越境する言語・映像・文学」を開催して、国内外の研究者を招いて研究・教育の両面から東アジアにおける人文学研究の将来像について議論を行いました。
これらのシンポジウムにはいずれも報告書が刊行されて、それぞれの成果を活字でも記録して公開してきましたが、1回目のシンポジウムについては、その内容を論文集『イメージとしての戦後』(2010)として青弓社から刊行しています。また、毎年国内外の研究者を招いてセミナー・シリーズを開催しました。五年の間に計10回のセミナーが開かれ、参加した教員・大学院生は大きな刺激を得てきました。これらの過去の企画については、「過去のシンポジウム「過去のセミナーをご参照ください。

この他、センターのメンバーが編集委員会を構成しEditorial Advisorを国内外の著名な研究者に委嘱して、機関誌『JunCture(ジャンクチャー) 超域的日本研究』を編集作成し、第4号まで刊行しました。『JunCture』は年刊で、毎回編集委員長が交代して各号で特集を組み、水準の高い論考を掲載してきました。この機関誌は一部を笠間書院が販売して流通に乗せることで、通常の大学の学術刊行物とは異なった幅広い読者に浸透することが出来、そのシステムについても、人文学の学術雑誌の中で注目を集める存在になっています。

「アジアの中の日本文化」研究センター(JACRC)は日本近現代文化研究センター(MCJC)の以上の活動を継続し発展させていきます。年一回の国際シンポジウム、年間数回のセミナー・シリーズもこれまでと同様に開催し、『JunCture 超域的日本研究』も誌名はそのままに継続刊行しています。MCJCの最終年度のシンポジウムのテーマである「東アジア関係学の構想」は新しいJACRCの活動に引き継がれています。

東アジア関係学に向けて──研究プロジェクトと教育プログラムとの連繋

jac_img01.jpgMCJCシンポジウム「東アジア関係学の構想」(2012年2月)の模様

新しいセンターでは上記のように日本近現代文化研究センターで成果を収めてきた国際研究集会と機関誌を継承し、グローバルな観点から日本と東アジアの関係について研究を行うとともに、院生と若手研究者に研究発表と経験の場を積極的に提供していきます。
研究プロジェクトの柱としては共同研究プロジェクト「アジアの中の日本文化」を遂行し、もの・ひと・思想の国境を越えた流れや、言語間・メディア間の翻訳を重要視しながら、アジアの中で果たして来た日本の役割とその文化的意味を検証していきます。これによって、従来国別に進められることが多かった日本文化研究・アジア文化研究に対して新しい視点をもたらすことが可能になります。歴史学・文学・映像学を中心に、領域横断的かつ総合的に研究する方法を示しながら、中国・韓国・台湾の大学・研究機関の研究者との共同研究を推進し、この研究課題に取り組んでいる世界の研究者たちとのネットワークを形成していきます。具体的なテーマとしては「東アジア圏における文学・思想の翻訳と往還」「東アジア圏における交流の社会史」「映像・視覚文化を通じた東アジアのグローバル化」「東アジア関係学の可能性」「東アジア関係学の構築と展望」などが検討されています。
また、2014年度後期から文学研究科に設置されたグローバル30(G30)プログラムの英語コースである「アジアの中の日本文化」の教育と、センターの研究は内容的に連繋しています。学部と博士課程前期課程対象に英語で行われる教育プログラムと互いに補完し合うことによって、年々増加する留学生からの教育研究の需要に的確に対応し、魅力的・現代的な教育研究のプログラムを開発することも可能になると考えています。センターの活動が留学生・日本人学生を問わず、彼らに活発な国際交流を促すとともに、グローバルな環境に順応できる国際的素養に富んだ人材を育てることに貢献できると考える次第です。
センターの今後の発展のために、多くの方々のご理解とご支援をお願い申し上げる次第です。

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